ストレス応答の1細胞ごとの違いが神経発達障害と関連する

Variations in brain defects result from cellular mosaicism in the activation of heat shock signalling.
Ishii S, Torii M, Son AI, Rajendraprasad M, Morozov YM, Kawasawa YI, Salzberg AC, Fujimoto M, Brennand K, Nakai A, Mezger V, Gage FH, Rakic P, Hashimoto-Torii K.
Nat. Commun. (May 2) 8, 15157, 2017. 
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28462912

胎児期に有害な化合物に曝されると様々な脳の発達障害とその後の精神神経疾患をきたすが、その病態は高度のものから軽度まで様々で予想できない。今回、米国ワシントンChildren's National Medical Centerの鳥居和枝博士らの研究グループは、我々(山口大学医学部医化学講座)を含む国際的な共同研究により、神経細胞の単一細胞解析によってこれら病態の違いを生み出す分子機構を明らかにした。まず、胎児期にアルコールや重金属に曝された胎児の脳では、神経細胞ごとにHSF1-HSPシグナルの強さはランダムで、そのシグナルが無いものから顕著に強いものまで大きく異なることを見いだした。次に、このシグナルを欠失すると細胞死を導くが、逆に過剰な活性化は神経細胞の移動の異常を導くことも分った。これらの知見は、先天性神経障害の多様性がHSF1-HSPシグナル活性化のモザイク性に起因することを示唆している。